Tさんが用事で隣の郵便局に来た時のことです。
郵便局の中にお母さんと2~3才の坊やがいました。お母さんは窓口で局員さんとお話し中、小さい坊やは退屈してぐずりだしました。お母さんは用事に夢中で気づきません。
Tさんがふとカウンターの下の壁を見ると、そこにはたくさんのくだものの絵が描かれたポ
スターが貼ってありました。
そこでTさんはその坊やの横に行って、
「もも さあどうぞ」「ぶどう さあどうぞ」「りんご さあどうぞ」
と次々にくだものの絵を指さしながら話しかけました。するとその坊やは「むしゃむしゃむしゃ 」と食べる真似をはじめました。本を知っていたのか、Tさんのおはなしにつられたのか。
Tさんすっかり嬉しくなり、最後のくだものが終わるまで、坊やと楽しいひと時を過ごしました。もちろん坊やも楽しかったのでしょう。一生懸命 「むしゃむしゃむしゃ」、その後用事が済んだお母さんと機嫌よく帰っていきました。
くだもの 平山和子作 福音館書店 「すいか さどうぞ もも さあどうぞ ぶどう さあどうぞ なし さあどうぞ りんご さあどうぞ くり さあどうぞ かき さあどうぞ みかん さあどうぞ いちご さあどうぞ ばなな さあどうぞ ばななのかわ むけるかな? じょうずにむけたね」 |
Tさんはのちに文庫にきて「嬉しいことがあったのよ」と報告してくれました。
そしてこんな素晴らしい経験ができたのは、バンビぶんこを知ったおかげ、そしてたくさんの本に出合えたおかげ」とまで言ってくれました。
こんないい話を聞けたのは、Tさんと知り合ったおかげ、私こそTさんに感謝です。