2012年7月23日月曜日

恩師と母の姫草履

大学時代にお世話になった先生が亡くなられ偲ぶ会に参加しました。T先生は私が大学3年生から学んだ図書館学科の先生でした。勉強不得意の私は先生になにを教わったか覚えていません。ただ先生の授業のやり方が鮮明に記憶に残っています。
T先生は授業のとき教壇の机の角にちょっと腰をかけて、身振り手振り派手に授業を進めました。まだ教壇で四角四面に生真面目に授業をするのが普通の時代です。T先生のアメリカナイズされた雰囲気はとてもかっこよくステキに思えました。先生は私たち仲良し女子4人組に良くごちそうしてくれました。それはホテルのレストランだったり、お好み屋さんだったり、バーに連れて行ってくれたり、まだ戦後が残っているような時代にそれなりにドレスアップして出かける食事は大変貴重で楽しく、良い社会勉強になりました。(先生の長い独身時代のことです)
うちは夫も先生の教え子であり、のちに同僚として特に親しくお付き合いさせていただきました。先生は血糖値が高く、奥様がとても心配されていて、甘いもの大好きな先生は奥様に隠れて甘いものを召し上がっていたなどのほほえましいエピソードもききました。先生は仕事上でも能力を発揮され、医学図書館界で非常に大きな功績を残されました。


はなし変わって私の母親のことです。母は手先が器用で細かいものを作るのが大好き、できあがった手芸品を人様に差し上げるのが母の楽しみであり、喜びでした。私はきっかけを覚えていないのですが、T先生に母親手作りの姫草履を差し上げました。先生は特に喜んでくださったのがのちにわかりました。思いがけず先生は母の葬儀に来てくださったのです。「お母様に姫草履をいただいて・・・」母の急逝でパニックになっていた私には先生の言葉は最後まで聞こえず、ただただ涙、涙でした。 
  偲ぶ会で私は奥様に先生が母の葬儀に来てくださり、本当に本当に嬉しかったとおはなししました。奥様はそのことを覚えていてくださって「90才まで生きられたのはあの姫草履のおかげです」とまで言ってくださいました。ただの小さい手芸品ですが、こんな素晴らしい思い出を残してくれました。
T先生、奥様ありがとうございました。先生に合掌。